さて、今回はSESにおける毎月の営業事務とはどんなことをしないといけないのかを書いていきます。エンジニアの皆さんは日々の業務に注力していますが、裏方ではこんなことをやっています。私のように、エンジニア出身で営業周りを一切関与していなかった方にも参考になれば、と思います。
目次
概要
まず、取引先と業務委託基本契約や秘密保持契約等を締結します。今回の記事は、その後実際に業務委託を受注・発注する際のフローを説明します。SESでは単月契約のものから複数月契約のものまで色々ありますが、今回は単月契約で毎月更新するもの、として説明します。
全体の流れ(フロー)
ざっくり、毎月以下のフローの通りに進んでいきます。
上記フローのように、SESとは言っても、多くの商売と同じで、「見積」「発注」「納品」「請求」「入金」というサイクルが必要となります。エンジニアには「納品」しか見えていない(場合によっては納品すら見えていない)ことが多くありますが、このようなサイクルで商売が成り立っていることを理解して頂ければ、と思います。
1カ月契約の場合、こんなサイクルになります(支払サイト30日と仮定)。エンジニアが技術的な業務に注力できるのも、営業担当が契約周りを面倒見ているからだということが分かりますね。小さい会社の場合、営業兼任のケースも多いと思いますので、複数案件を抱えている方が月末月初に現場業務以外に忙しいことは少し納得頂ければと思います。
では、それぞれのサイクルでどのようなことをする必要があるのか、どんなドキュメント(書類)を作成しないといけないのか、を説明します。
尚、このような事務的な業務は発注会社側は営業部門ではなく、「購買部門」「パートナー推進部門」といったコーポレート部門が担うことが多いです。発注会社側の営業部門は、クライアントへの営業を行う部隊ですから、それも当然かなと思います。
見積・発注
めっちゃ概要
要は、業務委託を発注・受注するにあたって、いくら・いつまで・どこで・何を納品する等を双方で合意して契約をする、というフェーズです。それでは各作業を簡単にですが解説していきます。
【発注側】見積依頼
まず、業務委託してもらうエンジニアの見積を出してもらう必要があります。営業担当にメール等で、見積書を発行してもらうように依頼します。その際、以下のような内容を伝える必要があります。
- 案件名や業務内容
- 業務期間
- 作業場所
- 成果物
- 支払条件
- 時間精算有無
- その他特記事項
【受注側】見積書提出
見積依頼を受けたら、見積書を発注者へ送付します。見積書には以下のことを書く必要があります。
【発注側】発注書(注文書)送付
見積内容に相違がなければ、発注書(注文書)を送付します。発注書(注文書)に記載する項目は、基本契約時に定めます。原則、基本契約とは「個々の案件等に依存しない部分(=つまり金額や期間、作業場所等)」の合意であり、個々の案件に依存する部分はこの発注書で合意を得ます。一般的には「受領から7日以内に異議申し立てがなければ承認されたものとする」といった文言を書きます。
【受注側】発注書の確認(注文請書の発行)
注文請書(ちゅうもんうけしょ)を発行することで「発注を請けましたよ」ということを合意することは出来ますが、一般的には使われていません。発注者側から求められなければ、発注書を拝受致しましたといった旨の返答だけで合意の旨を伝えるのがよいでしょう。
業務遂行
【受注側】委託された業務を遂行する
ここがいわゆる客先常駐とか言われている部分ですね。基本契約や個別契約(発注書)の内容に則り業務を遂行します。
【受注側】納品
発注書で定めた納品物を納品します。一般的には「勤務実績が分かるもの」や「作業報告書(A41枚もの)」であることが多いです。具体的に「システム設計書」や「プログラム類」を納品物とすることはありません。これらを納品物とする場合は、SESではなく受託(請負)契約になるかと思います。
【発注側】検収
納品を受けたら、検収を行います。検収とは「納品物を確認すること」です。滞りなく納品物がそろっていることを確認出来たら「検収書」などの納品を受けて、それを認めた(受け入れた)ことを示す書類を発行することもあります。
請求・入金
【受注側】請求書の送付
納品が終わったら、発注書で定めた方法で請求書を発行します。「いついつまでにいくらをどのように支払ってください」といったことを記載します。請求書は英語で「インボイス(invoice)」です。インボイス制度に深くかかわってきますので、インボイス制度についてはこちらを確認してください。
【発注側】請求内容の確認・入金
請求書の内容を確認します。問題なければ、期日に入金を行います。
【受注側】入金確認
入金されたことを確認します。翌営業日に入金されていない場合は、まずは担当者に連絡をしてみるとよいでしょう。
最後に
自分が行っているビジネスがどのように回っているのかを理解することは大切だと思います。私はエンジニアしか知らない状態で起業して、この辺りのお作法がまるで分っていなく、クライアントに聞きながら行う、という少々おかしなことをしてしまいました。そんな失敗を他の方が少しでもなくなればと思います。
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