今回はSES界隈でよく聞く言葉を色々説明していこうと思います。一般的なことから、これって何のことだ?というときに参考になればと思います。適宜追記していきます。
目次
SES・準委任契約
早速SESという言葉から。SESとは「システムエンジニアリングサービス」の略で、一般的には準委任契約を指します。準委任契約とは特定の業務を遂行することを定めた契約のことです。 業務が法律行為であれば「委任契約」、法律行為以外の業務であれば「準委任契約」となります。業務を遂行することが必要な契約で、完成責任を負わない代わりに善管注意義務を負います。
善管注意義務とは読んで字のごとくですが、「善良な管理者の注意義務」の略です。要は「一般的に期待されているであろうことをきちんと実施する」といった行為です。これは「バグを出さない」といったことではなく、「バグを出さないためにこういったことを実施してきて、その実施した行為に対してレビューを受ける」ことです。あるいは遅刻・欠勤をしないこともそうでしょう。当たり前のことを当たり前に実施していれば、おのずと問題は発生しません。
支払サイト
支払サイトとは、入金されるまでの期間を示す言葉です。例えば支払サイト30日、と言ったら翌月末に入金されるということになります。尚、支払サイトは最大60日(下請法)と決まっています。
例えば、給与支給が翌月25日の会社の場合は、25日以上の支払いサイトの場合、損益計算書(PL)では黒字でも、キャッシュフローでは入金を受けてから給与を払うことが出来なくなり厳しくなります。(一時的な急な増員等にも注意)
請負、受託
これは一般的には「完成責任を負う契約」でSESではないです。「いつまでに」「何を納品する」ことを契約します。小規模・零細企業では、数十万~数百万程度の請負契約しか締結出来ないかと思います。これは、本契約には与信が必要になるためです。
例えば単価80万円の100人のエンジニアが半年稼働することで完成するシステムを請け負ったとしましょう。その場合、100人×80万(/月)×6か月=4億8000万ものキャッシュが必要になります。つまり、大規模なシステムを請け負うということはその会社の与信が重要になります。(一般的には、設計書の納品で検収、プログラムの納品で検収、など大きな金額になりすぎないようにフェーズを分けます)発注者側にとってみても、プロジェクトが順調に進まなかったときに、企業体力があるか、といった要素はとても重要な項目になります。
基本契約、個別契約
基本契約とは、会社間での基本的な取り決めです。個別契約とは具体的な案件で、どんな業務をどこで実施いくらで、とかは個別契約で取り決めます(注文書・発注書)。言い換えると個別契約で記載されないことは基本契約に記載されます。例えば、基本契約には「作業場所は個別契約で明記する」といったようなことを書きます。
エンタープライズ
エンタープライズというと、SaaS系サービスの最上位プランとかでよくありますね。SES界隈ではエンタープライズというと、「大企業」「官公庁」を指すことが多いです。
稼働時間、精算有無
稼働時間とは、一カ月の業務時間のことです。自社作業時間は含まず、委託作業を遂行している時間です。精算有無とは、稼働時間に応じて毎月の支払額を精算するかどうかを指します。よくあるのが140~180時間という精算幅です。これは、一カ月に140時間~180時間の間であれば事前に取り決めた単価通り支払います。140時間未満だった場合、不足した時間分控除します。180時間を超過した場合は、超過した時間分を加算して支払います、という幅のことです。
逆に精算無しの契約もよくあります。この場合、(ありえないですが)1時間でも稼働すれば単価満額を支払う必要がある一方で、300時間稼働しても同じ金額となります。最近は働き方改革もあってか、そんなケースは目にしなくなりましたが、300時間稼働して、固定精算だと所属会社は大赤字です。ですから、エンジニアといえど契約内容を理解した上で業務に臨みたいところです。
指揮命令権、偽装請負
準委任契約(SES)とは派遣契約ではありません。派遣契約とは、派遣先会社の社員になるため、派遣先会社から作業指示を受けます。準委任契約(SES)は業務委託であり、お客様から業務命令や作業時間を拘束するような行為を直接請けてはいけません。このような命令を請けているにもかかわらず、 準委任契約(SES)をしている、という場合に偽装請負と言われます。(業務委託≒請負契約を偽装している、という意味)
じゃあどうすれば、というとまともな企業の場合、自社の責任者(指揮命令権限を持つ人)がいます。その責任者から作業指示をうけて対応するという方法になります。
還元率
最近よく聞かれるようになった言葉ですが、明確な定義はありません。会社によってまちまちですが、単価のうち一定のパーセンテージを給与として支給しますよ、という意味合いで使われている印象です。
帰属意識
基本的に客先で働くことが多いため、所属会社への帰属意識が薄れることが多くあります。それを防止するために、月次で社内会議を行ったり、飲み会・社員旅行・BBQ等のイベントを行ったりしている会社もありますが、、、あまり評判はよくありませんね。帰属意識は会社に所属する意義を社員に理解してもらうことから始めるのではなかろうか、と思いますね。
休日・夜間対応
システムのメンテナンスは休日、夜間に行われることが多いです。システムには利用者がいますから、利用者が使えないことがないように、ということです。また、障害対応等はいつシステム障害が起こるか分かりませんから、24時間起こる可能性があります。そのため、休日・夜間対応が発生することは他の業界より多くあるのではないかと思います。(特にインフラをやっていると、、メンテナンス=サービス停止が多いため、アプリより休日対応が多い印象)
オペレータ、監視、運用
ロースキル案件なんかでよく見られるキーワードです。一般的に「開発」「運用」は別組織(チーム)で行われることが多いです。DevOpsという言葉も聞かれるようにはなってきましたが、まだまだ従来の運用形態が多い印象です。
オペレータとは作業指示書(マニュアル)に則って、エラーメッセージがでたらこのマニュアルを実施する、といったことをします。監視とはエラーメッセージが出ていないか見届けることです。つまり、スキルのいらないことが多いため、ロースキルの方が入りやすいことが多いです。
なるはや、ASAP、可及的速やかに
出来るだけはやく、ということです。ASAPとは「As soon as possible」の略です。可及的速やかにという言葉は固いお客様(官公庁等)で良く聞きました。(今でも使っているのかは不明)
えいや、鉛筆なめなめ、ざっくり、等
おもにおじさま方(40後半あたり)が使う印象の言葉です。
このあたりは見積をするときによく出てくる言葉です。「えいや」「ざっくり」は概算で出すという意味です。例えば、何らか修正しないといけない要件があった際に、100機能のうち10機能くらい影響出そうだ、1機能の修正とテストに3日かかるから、30営業日かかります、みたいな数字を出すときに使います。
鉛筆なめなめとは、金額や工数の数字遊びをするときに使います。商取引ですから、1000万で受注したいなどの思惑があるものです。なので、うまい具合に数字を調整してその数字に合わせたりすることを鉛筆なめなめと言ったりします。(管理工数をうまいことのっけてとか、単価を微調整して、とか)
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